天照大神は卑弥呼だった 大平裕 PHP

この方は、他人の論文は間違いを生き生きと指摘されますが、自分の論理の欠陥は全く見えないようです。「卑弥呼に比定しうる人物は「古事記」「日本書記」で特筆されている天照大神」においてほかになかったはずなのです」から論理が出発します。「ええ?」と思うと、次の言葉が「天武持統朝の最高級の知識人たちは、紀年・暦の知識に欠けていたことから、180248年に活躍した卑弥呼を、360年~390年頃の神功皇后に間違って比定してしまいました」という理解です。最早、最初の一歩で、本一冊を無駄にしてしまっています。
そもそも天照大神が女神でなかったことを知ったら、彼はどうするのでしょうか。紀年・暦の知識が欠けているはずがないでしょ。知っていて書いているのです。神功皇后?そんな人物は創作です。
題名に惹かれて、手に取ってしまった私が馬鹿でした。
PHPさんも間違いをすることもあるということですね。残念です。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
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読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★
論理の力強さ ★

日本語の正体 金容雲 三五館

「日本=百済」説があまりにも、傑作であったため、どうしても読みたくなり、頑張って探してきてじっくり読ませていただきました。百済語が日本語で、百済語を投げ出したのが韓国語だったという発想、また結論は秀逸です。しかしながら、中に記述されている、カラ語というのが、どこから登場してくる言葉なのか全く理解できません。
そして、カラ語から、日本語への変化の様子が、多くの例を示しながら書かれているにも関わらず、そこには、まず、法則がないために、なぜ、そのように変化するのかが理解できない。
別の音に交換されるのも、音が脱落するのも、必ず、理由があり、それが変化の法則として整理されて初めて、言葉の変化、転訛が示され、源流であることが証明されるのだと思います。
彼は言語学者ではないですから、仕方ないのかもしれませんが、理学博士?であるなら、実証の方法はご存じだと思います。正直残念でした。
Hontoが、Usoに変わりますと言われてhonUになり、tがsに変わりますと言われても、「ああそうですか」と答えるしかないのと同じです。。着目点は素晴らしいだけに、残念な一冊です。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
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読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★★★
論理の力強さ ★★

「日本=百済」説 金容雲 三五館

こんなことを言っては、おこがましいことは十分承知していますが、私が辿り着いた日本建国の歴史に非常に近いのが、この人の分析です。私のアプローチは、日本書紀と日本語から始めて、中国の史書を読むことで、多分間違いないと確信が持てた内容です。つまり、私は、日本人として、日本という環境の中で日本中心にものを考えて、この結論にたどり着きました。この金容雲氏は、韓国人として三国史記から始めて、百済を矮小化していると気付き、突き詰めていった結果、この日本は百済であったという説に辿りつかれたようです。
誤解がないように言っておきますが、私は、日本が百済の一部であったとも、属国であったとも考えていません。兄弟国であったと理解しています。なぜ、兄弟国であったのかという理由は、この書に書かれている内容とほぼ同じです。
少し残念なのは、論理が弱い点です。説得材料が、若干乏しいように思います。もちろん、強い説得材料があったなら、日本史の教科書はとっくの昔に変わっていることになりますが。でも、彼が言っていることは、間違っていません。なんとかして、私は、そのことをきちんと実証したいと思います。

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読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★★★★
論理の力強さ ★★★★

学問と夢と騎馬民族 江上波夫 日本経済新聞社

騎馬民族征服王朝説の江上波夫先生を知る一冊。私にとっては、幼少期や、中学、高校、大学時代のお話などどうでも良いのだが、それなりに面白く読ませていただいた。古代史などと言う学問分野は、あくまでも世の中に必要なものとは認識されていなかったのだと言うことが良くわかる内容でもありました。
何と言っても、II部「学問は探検である」が、この本のすべてです。とくに「日本における民族の形成と国家の起源」は、すべての古代史ファン、考古学ファン、考古学の研究者に是非とも読んでもらいたい文章です。1964年に東洋文化研究所紀要に掲載された論文です。まさしく古代史の教科書。必見です。絶対のおすすめの文章です。この論文のために、この本を手に取って下さい。
その後の、牧畜騎馬民族と農耕都市民族の違いも面白かった。生涯にわたり、騎馬民族を追い求めた江上波夫先生の史観です。やっぱり、江上波夫先生は素晴らしい。そう感じました。

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読みやすさ  ★★★★★
着想の奇抜さ ★★★★
論理の力強さ ★★★★★

考古学が解き明かす古代史 古庄浩明 朝日新聞出版

編集が良く考えられていて、確かに「すらすら読める!」は嘘じゃない。
まったく考古学に興味のない人を惹きつけるには、良い本だと思いました。できるなら、中学生にこの本を読ませたい。
ただ、何か所か首をかしげたくなる箇所が存在しました。その一つが、「卑弥呼墓私論」。中山大塚古墳説。河岸段丘の上にあってというのはそうかもしれない。でも、普通の古墳は皆そうですが。川が氾濫するような場所に古墳は作りません。やはり、築造時期と名前から特定するというのは、ちょっとちょっと乱暴すぎます。邪馬台国の墓が前方後円墳であったなら、伊都国、奴国の墓も前方後円墳でなければおかしいです。
最後の言葉が効いています。「卑弥呼の邪馬台国は、古代史のロマンです。解き明かすことは不可能でしょうし、ときあかされないでほしい気もします。みんながそれぞれ解き明かそうと努力するところにこそ、ロマンといわれる所以があるからです。」
おい、おい。何言っとんねん。自信がないのなら、そんな説は、載せないでほしかった。
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読みやすさ  ★★★★★
着想の奇抜さ ★★★★
論理の力強さ ★★★

「反」日本史 須藤公博 講談社

副題「名門大学入試問題で知る」という副題がついている通り、駿台予備校の講師の方が、大学の入試問題から、最新の通説をどのように理解するかをまとめた本です。
一つ感じるのは、大学入試の問題がつまらない。奇天烈な説を取り上げて、それを入試問題にはできないでしょうけど、所詮は現在の高等学校の指導要綱がベースにあるわけですから、自ずと限界があるのです。
例えば、最初にとりあげられているのが、筑波大学の論述問題、「推古朝の政治と文化の特質について論述せよ」で、使用する語句が、厩戸皇子、三経義疏、蘇我馬子、渡来人。つまらん問題ですよね。私のように、聖徳太子がいなかった説ではなく、推古天皇いなかった説のものにとっては、それって日本書紀の嘘をそのまま書けと言う問題としか思えないのです。
問題とは大きく離れてしまいますが、解説というか、問題の窮屈さに対する説明の面白さが光ったのは、浅野内匠頭はなぜたった一時間の取り調べで切腹に?という、解説。視点の置き所はなかなかです。しかし、入試問題はやっぱりつまらなすぎ。こんな入試で選抜しているから、大学から世界を変えるような奴が出てこないのだと思います。クイズ王を入学させたい学校は、所詮二流の学校です。
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読みやすさ  ★★★
着想の奇抜さ ★★★★
論理の力強さ ★★★

日本史のツボ 本郷和人 文藝春秋

七つのツボを押さえれば、日本史がわかるという整理のもと、天皇、宗教、土地、軍事、地域、女性、経済という観点から、非常に短いコラムが寄せ集められた本です。
ツボ単位にまとめて、日本史の流れを整理してほしかったと思います。どちらかというと、雑学辞典のようになってしまい、それも、前後の関係性がないので、読み終わった後、何がいいたかったのかなと考え込んでしまいました。また、ここの雑学が、あまりにも薄い。それぞれを、原稿用紙2~3枚でまとめよという制限があったのでしょうか。
7つのツボと言われるが、逆にそれ以外にどのような視点があるのかと問いたくなります。それぞれのツボに新しい切り口が欲しかったと思います。せめて、個々の話に、原稿用紙
5~6枚分ぐらいのボリュームがあれば、引き込まれたかもしれません。
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読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★
論理の力強さ ★★

「日本書紀」の呪縛 吉田一彦 集英社新書

本と日本史というシリーズの第一巻です。日本書紀に書かれている詳細を検討しようという本ではありません。日本書紀という書物によって、何が生まれたか、何がかわったか、また、日本書紀の研究にはどのような歴史があったか、そして、日本書紀というものをどのようにとらえればよいのかという内容が書かれた本です。
日本書紀という書物の、副次的考察をまとめたものと言えばいいのかもしれません。驚くべきような情報はないのですが、こういう本はなかったために、私には新鮮な感覚がありました。
それぞれの内容が、簡単に整理されていて、読みやすくもありました。また、簡単にまとめるために、作者の断定になっているのですが、いくつかのポイントで、「うーん、それはどうかな」という感想も持ちました。
欲を言うなれば、日本書紀があることで、これだけ世の中が変わったという指摘が欲しかったと思います。この本がなかったなら、どのように歴史は変わったかを言って欲しかったと思います。
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読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★★★
論理の力強さ ★★★

日本書紀はなにを隠してきたか 遠山美都男 洋泉社


私は、日本書紀は、なにかを隠そうとした書物ではなく、理想の日本の歴史として描かれた書物であると認識しています。従って、意図的に隠された内容はなかったと思いますが、それまでに残されてきた歴史的な記録が書き換えられた内容は多々あったと思います。
着目された内容は、聖徳太子、大化改新、壬申の乱、女帝の時代、その他では白村江の戦い、蘇我物部戦争、騎馬民族渡来説、卑弥呼など、非常に注目度の高い箇所を取り上げ、問題点をうまく整理されていると思います。ただ、残念ながら新説はなく、これまで言われていることを纏め上げたものと言う内容になっています。
テーマの取り上げ方は面白いと思いますし、読みやすくまとめられていることも確かです。「そうなんだけどね」というのが、私の感想です。
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読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★★
論理の力強さ ★★★

日本史の論点 中公新書編集部編 中公新書

邪馬台国から象徴天皇制までと副題に書かれているように、決して古代史の論点だけを取り上げた物では成りません。私がコメントをするのは、第一章古代の倉本一宏さんの部分だけとさせていただきます。
魅力的な本書のタイトルに対して、この本が何を言うための物なのかということが、いまいちわかりませんでした。邪馬台国、大王はどこまでたどれるか、大化改新、道鏡、墾田永年私財法、そして、武士はどのように台頭したかというのが、古代史の論点として取り上げられています。これらの論点は、確かに、論文の数の多い分野ではあるのでしょうが、そこに書かれている内容は、どうして論点となったのかという歴史であって、何に終息しているかという点であって、その論争が生み出した成果は書かれていません。そして、なぜか筆者の意見が論争の結論のように書かれています。決して、新しい解釈でもなければ、論争により生み出された新たなる真実でもありません。
高校の国語の副教材に文学史というのがありましたが、内容を読まずに人名と数行の解説を読むことの意味がわからなかったことを思い出しました。
第五章現代の宮城大蔵さんのところは面白かった。そういう見方もあるのかと確かに感じました。
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読みやすさ  ★★★
着想の奇抜さ ★★★
論理の力強さ ★★★