古代日本と古代朝鮮の文字文化交流 歴博国際シンポジウム

歴博シンポジウム
12月15日と16日に渡る2日間、イイノホールで開催された国立歴史民族博物館主催、朝日新聞社後援のシンポジウム「古代日本と古代朝鮮の文字文化交流」に参加してきました。日本と韓国の考古学、並びに古代史研究家が文字文化を中心に研究発表を行うとともに、最後はシンポジウムが行われました。韓国側が国立博物館や、文化財研究所の方々に対して、日本はいくつかの大学教授という構成に、古代史に取り組む国の姿勢の違いを見たような気がしました。古代史研究は国家事業であるという考え方が日本には薄いのかもしれません。
木簡の研究が発表の大勢を占めました。韓国では6世紀に、日本では7世紀に使用されることになる木簡は、単なる荷札や指示書等の役割でなく、論語が記されたものがあったり、信仰や日記等に使用されていた報告は興味深い内容でした。(大阪大市氏、山形大三上氏等)また、同じ漢字を用いながらも、韓国と日本における表記方法の違いや(愛知県立大犬飼氏)、逆に同一文字の使用から百済の影響を見られた内容も(早稲田大李氏)、個人的には自分の理論構成を助けるヒントとなるものでした。韓国国立文化財研究所長の金氏の新安陶磁器と日本の僧の関わり、韓国国立海洋文化財研究所の林氏による沈没船の積荷から研究なども、面白く聞かせていただきました。できることなら、水中に長時間沈んでいたにも関わらず、陶磁器の墨書や木簡の文字が消えなかった理由も知りたいと感じました。使用された墨になんらかの物質が配合されていたのでしょうか。
また、せっかくの、日韓共同研究であるなら、百済、新羅の研究に比較し、大幅に遅れを見せている伽耶地域の研究と倭のかかわりについての研究も、共同テーマとして取り上げ発表いただければと思います。総じて、有意義な2日間を過ごさせていただきました。