本当に姉妹だった乙姫とかぐや姫!?


auCMシリーズは、イメージと全く異なる世界が展開するので、本当に面白く次は何がどうなるのだろうと楽しみに拝見しています。あのクリエーターの方、本当にうまいですよね。
さて、
CMではかぐや姫と桃太郎の結婚を一番喜んでくれたのは「おとちゃんかなー」とかぐや姫が振り返ると、浦島太郎が、「優しいお父ちゃんだね!」と相槌を入れます。それに対して「じゃなくて、おとちゃん」「乙姫」。浦島太郎は、「乙姫って・・・」と言いだすと、かぐや姫は間髪いれずに「お姉ちゃん」と答えます。浦島太郎は絶句して、そのまま倒れてしまいます。まさに、衝撃的な真実が明らかになった瞬間でした。

乙姫(おとひめ)の「おと」というのは、かわいい、とか若いという意味なのです。ですから、男につけば、弟(おとうと)もしくは(おとと)とも言いました。兄弟もしくは、姉妹の下のほうが「おと」であるのに、「お姉ちゃん」にされてしまったのです。
弟媛(おとひめ)という表現は、日本書紀の中にも繰り返しいろんな場面で出てきます。例えば、応神天皇が阿知使主(あちのおみ)と都加使主(つかおみ)を呉に遣わして、縫工女(きぬぬいひめ)を求めた時、呉の王は工女、兄媛・弟媛、呉織(くれはとり)、穴織(あなはとり)の四人の婦女を倭国に与えたとなっています。兄媛と弟媛という表現が使われています。
景行天皇が美濃に行幸した時、お側の者が「この国に佳人がいて、名を弟媛といいます。容姿端麗で、八坂入彦皇子の娘です」と伝えます。天皇は弟媛にあうために泳宮(くくりのみや)で鯉を池に放ち弟媛が出てくるのを待ち伏せます。鯉が見たいと出てきた弟媛は、「私は美しくないが、私の姉の八坂入媛は容姿端麗で、貞潔だから後宮に入れてくれ」と頼みます。天皇はそれを聞き入れるという話になっています。真に容姿端麗なのは、弟媛で姉想いでもあったのです。
この景行天皇のお話では、泳宮(くくりのみや)や鯉が登場し、浦島太郎の「乙姫」がこの話から生まれたの出はないかと思わせる下地があるようにも思います。
一方で、乙姫の竜宮城というのを聞いて、すぐに思い起こされるのが、海神(わたつみ)の宮である龍宮です。「魏志倭人伝を探る」の中で紹介させていただきました、対馬の和多都美神社と豊玉姫の伝説は浦島太郎そのものであったのかもしれません。釣り針を無くした山幸彦は、釣り針を探しに大海原に入っていき、海神と巡り会います。海神は巨大な宮殿に住んでおり、美しい娘豊玉姫がいました。山幸彦はそこに住み着いてしまいます。
その後しばらくして、九州に戻った山幸彦を追いかけて、豊玉姫は対馬から九州に渡り、神武天皇のお父さんであるウガヤフキアエズの神を生むのですが、海神の国に戻ってしまいます。浦島太郎の乙姫より情熱的ですが、乙姫のモデルは豊玉姫そのものであったのかもしれないとも思うのです。
豊玉姫には、妹の玉依姫(たまよりひめ)がいました。玉依姫は、豊玉姫に代わってウガヤフキアエズを養育するとともに、その後、彼の妻になって神武天皇を生みます。かぐや姫のモデルが、玉依姫であるなら、CMで描かれている世界は真実だということになります。
かぐや姫の側からも検証してみたいと思います。乙姫は、どうしても浦島太郎の話の竜宮城に住む姫としが出てこない脇役ですが、かぐや姫に関しては竹取物語の主役であることから、非常に多くの情報が残されています。
かぐや姫は「月」の人であるという認識をお持ちの方も多いと思います。そもそも、何故異国の人が日本にやってきたのでしょうか。
月を見て泣くかぐや姫に、翁が尋ねると、かぐや姫は次のように答えます。「私は、この世界の人ではありません。月の都の人です。前世の因縁があったのでこの世界に参上したのです。今は帰る時となってしまいましたので、この15日に本国から迎えの人がやってくるでしょう。」
また、迎えの者が翁に対して言った言葉の中に「かぐや姫は罪をおかしておられたので、身分の低いお前のもののようなところにいらっしゃった。その期間も過ぎた。」と言い渡します。
つまり、かぐや姫は前世において、やってはならない掟を破ったことから、罰として人間界という下層界に遣わされたのです。所謂島流しの刑にされたわけです。
何をしたかは書かれていません。もしかすると、許しも得ず桃太郎とノリで結婚してしまったことだったのかもしれません。
かぐや姫がいたのが、対馬だったのかというと、それは少し違うようです。かぐや姫は、連れ去られることを阻止しようとする翁に対して、「あの都の人は、とても清らかで美しく、老いることもないのです。もの思いもありません。」と説明しています。
つまり、かぐや姫がやってきたのは、不老不死の国なのです。徐福が求めながら到達できなかった、蓬莱国がかぐや姫の出身地なわけです。最後に、かぐや姫は帝に対して、その愛の深さに感謝して不死の薬を渡します。しかし帝はかぐや姫のいない世界で不死であっても意味がないと、その薬を富士の山の頂で焼いてしまいます。
あれ、この話どこかで聞いたことがあると思われたかもしれません。そうなんです。シチュエーションは違いますが、実は浦島太郎に共通しているのです。浦島が訪ねて行ったのは、不死の国でした。浦島は現世が恋しくなり戻ってきますが、その時は不老不死の世界にいました。「戻るつもりなら開けてはならない」と言われて渡された玉手箱を開け、不老不死の魔力から解き放たれてしまったのです。
不老不死の国からやってきた、かぐや姫。そして、逆に不老不死の国に足を踏み入れた浦島太郎。そこにいたのが、乙姫なのですから、かぐや姫も乙姫も同じ国、蓬莱国の女性だったと言えるのではないでしょうか。
一人は海で、一人は月でという設定ですが、太陽神天照大神の兄弟は、月読命とスサノオの命でした。月読は夜の神として、そして、スサノオは海の神として任命されたのです。海の神と、月の神は、太陽の神を含めて兄弟姉妹なのです。
こうして見てくると、かぐや姫と乙姫は案外本当に姉妹だったのかもしれません。
浦島太郎の伝説があるのは、丹後半島であることをお伝えしました。古代、丹波王国があった場所です。この丹波王国と大和政権は、開化天皇と丹波の大県主の由碁理(ゆごり)の娘「竹野比売」との結婚によって結ばれます。竹の姫と浦島太郎は近くに存在していたのです。
ちなみに、垂仁天皇の妃にも「迦具夜比売命」(かぐやひめのみこと)という同じ名前の人物がいます。この人のおじさんは、「讃岐垂根王」(さぬきたりねのみこ)です。竹取物語では、竹取の翁は、讃岐造(さぬきのみやつこ)と書かれています。不死の薬を燃やした帝は、垂仁天皇だったのかもしれません。
どうやら、竹取物語も浦島太郎も丹波の伝承を背景に生まれてきたもののようです。姉妹かどうかは別にしても話の出処は同じなのかもしれません。

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