人物埴輪を語る 金井塚良一 さきたま出版会

遺跡や古墳からの出土品では、武具、鏡、刀剣、管玉などがどうしても注目を浴びますが、最も多く出土しているのは土器であり、そして、埴輪です。日本書紀の中では、垂仁天皇の条に野見宿禰の提言により殉死の制度がなくなり、埴輪が古墳に並べられるようになったこと、そして、土師臣の姓を与えられたことが記載されていました。しかし、こと人物埴輪に限ると、あれほど注目されているにもかかわらず、近畿地方ではほとんど存在しないことがわかっています。ほとんどが、東国と言われた関東圏の古墳で多用され、いろいろな表情の埴輪が取り上げられるようになりました。その限定的な発展のせいなのかどうかはわかりませんが、埴輪に関する専門研究者は非常に少なく、書物もあまり見かけません。私も博物館で飾られている埴輪の表情に魅かれて興味をもった一人です。当社のロゴには埴輪を拾い上げる「こだのぶ」が描かれていますが、古代人が何を言おうとしていたのかは実に興味のある素材です。それだけに、この本に期待をしたのですが、はっきり言って前半部分で得たものは何も有りませんでした。前半は、川島とかいう人との対談ですが、川島なる人物が持論を持たないせいなのか内容がかえってピンぼけしてしまっています。前半部分は不要だったのではないでしょうか。そもそも、全編を通して、なぜにそこまで水野正好氏に気がねする必要があるのか。このことが全く理解できません。いろんな説があって至極当然ですから、「違う」ものは「違う」と言い切って言いと思います。ただ、後半の「人物埴輪の伝播と上毛野氏」は素直に面白かった。賛成しきれないところも多々有りますが、読み物としてもなかなかです。それだけに前半があまりに残念でした。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
Pasted Graphic 4

読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★★
論理の力強さ ★★★