大王陵発掘!巨大はにわと継体天皇の謎 NHK大阪 NHK出版

水野祐氏の「三王朝交替説」に従うなら、現代に続く皇室の真の祖先は「新王朝」を築いた継体天皇となります。応神天皇五世の孫と日本書紀に書かれた継体天皇は、あまりにも慎重に皇統を書いている日本書紀及び古事記において、非常に例外的な天皇であることは間違いありません。越前で育ち、尾張や近江をバッグにつけて大和朝廷を征した大王に興味は尽きません。これまでの天皇に較べて、この継体天皇の特異な点のひとつは、その墳墓が、大和でも河内でもなく、三島と呼ばれる現在の大阪府高槻市に築かれていることです。彼だけが従来の墓域から離れ、三島の地に葬られているのかは大きな謎の一つです。但し、三島と言っても、宮内庁の管理する太田茶臼山古墳ではありません。今や、全ての人が認める今城塚古墳です。発掘調査が許されている唯一の大王墓と言ってもよい今城塚古墳では、埴輪祭祀場が発掘され百三十体あまりの埴輪が見つかり復元されました。この本は、この埴輪祭祀場発掘の中で、なんとかして埴輪の持つ意味を読み取ろうとしたNHKの取材班の記録です。ただ、ああでもない、こうでもないと悩んだ割に、結局何もわからなかったというに等しい結論です。途中からは、水野正好氏の「埴輪論」が展開されているにすぎない内容になっています。埴輪は東日本古墳の特徴なのですが、詳細な比較がなされるでもなく、埴輪祭祀場に作られた4つの区画の中にある大きな家型埴輪の違いさへも分析されていません。報道とはここまでしかできないのかと、ちょっと残念に思いました。継体天皇陵や埴輪に興味のある方には、高槻市教育委員会が書いている吉川弘文館から出されている書物が一番有益な情報が得られると思います。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
Pasted Graphic 4

読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★★
論理の力強さ ★★