謎の根元聖典 先代旧事本紀大成経 須藤隆 徳間書店

「先代旧事本紀」という書物が有ります。古事記の序文の中に「勅語阿禮、令誦習帝皇日繼及先代舊辭」とあり、現代語訳するなら、「天皇は阿礼に命じて、帝皇の日継と先代の旧字を読み習わせた」と書かれています。このことから、古事記の元になった書物があるということがわかりますが、この「先代舊辭(旧辞)」をそのまま借用して、それらしく作った書物が「先代旧事本紀」であると考えられます。ただ、「先代旧事本紀」の序文には、推古天皇の命により聖徳太子と蘇我馬子が著したと書かれており尊重された時もあったのですが、徳川光圀や本居宣長らによって「偽書」であると断じられました。但し、他の書物には見られない物部氏の伝承などが書かれており、その記載内容を尊重する論文も多く出されています。定説としてよいのかどうかはわかりませんが、今は、平安時代に物部氏の一人である興原敏久(おきはらのみにく)が編纂したものとされています。これが、十巻本と言われる先代旧事本紀です。今回の「先代旧事本紀大成経」は、七十二巻本にもなるもので、通説では江戸時代に作られた偽書となっています。これ以外に三十一巻本という偽書もあります。筆者曰く、記載内容である「天隠山理論」が「宇宙の根源」を示しているということですが、内容は筆者の思想書(?)と言うか、独自の解説を入れた啓蒙書のような内容となっています。偽書であったとしても丁寧な分析を期待していただけに、裏切られた思いが強い書物です。残念ながら、内容を真面目に論じようとは思えないものでした。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)
Pasted Graphic 4

読みやすさ  ★★★
着想の奇抜さ ★★★
論理の力強さ ★