南方神話と古代の日本 中西進 角川選書


万葉集の中西先生がシンポジウムの進行役をなされ、その中での様々な先生方の講演をまとめられた本です。多方面から南方文化の影響を報告するのは面白いのですが、今一、スバッと核心を突くと言いますが、これこそが南方から日本人がやってきた証拠であると突きつけてくれるものが存在しませんでした。梅原猛氏の米作が中国から直でやってきたという考察、上田正昭氏の隼人論、井上秀雄氏の南西諸島に残る痕跡、千田稔氏の海人族だからという説、金関恕氏の貝文化、中西進氏の神話を構成する火と水の概念、山折哲雄氏の八幡神、岩田慶治氏の南方民族の文化。どれもこれも、根底にあるのは、縄文人が南方からやってきたのだろう、という推論ありきで、それと関係あるだろう内容を導き出したような内容になっていました。縄文人が南方からやってきたのも、米が中国から直接伝わったのもそのとおりだと思いますし、南西諸島を伝わって来たという流れも会ったと思います。期待したのは、DNA鑑定のような明白は回答だったのですが、それを歴史の痕跡の中に探すのは難しいのかもしれません。高床式建物が、南方の民族の建築物と似ているというような話ではなく、もう一歩踏み込んだ、高床式の木の組み方や、柱の置き方が全く同じだというような研究調査結果が聞きたいと思いました。それが、隼人の遺跡と同じであるとかいうのであればよかったのですが。読んでいて以外に感じたのは、八幡神がここでとりあげられていることです。南方の神もしくは神話であるとは考えにくいですし、八幡神がどのように南方神話とかかわっているのかは理解できませんでした。(本の写真をクリックいただければ、アマゾンのショップに繋がります。)

Pasted Graphic 4

読みやすさ  ★★★★
着想の奇抜さ ★★★
論理の力強さ ★★★